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「新しい部屋」
留美がユウジくんの家庭教師を引き受けたので、ユウジくんのお母さんは大喜びだったそうで。
ユウジくんが留美に言っていた話によれば、留美の一人暮らしをする部屋探しは、ユウジくんのお母さんの「気合いが凄かった」のだという。

留美のお母さんが留美に示した条件は、留美の相談にのってくれたユウジくんのお母さんからコネのある不動産屋に伝わっていき。
即座にイチ推しの物件があがってきた。



留美とユウジくんが暮らす実家マンションから歩いて10分程度。
8階建てマンションの最上階角部屋。

ユウジくんのお母さんは顔がとても広くて。
コネを持っている不動産も沢山のお付き合いがあって。
今回は付近に土地をいっぱい持っている地主のお友達の物件だった。

元々大家さんの土地だった場所が地区開発で建設されたマンション。
地権者住戸と言われる物件で、マンションのオーナーである大家さんの住居用の物件なのだという。

ここは大家さんの娘さんが住んでいたが、年初の冬に引っ越して空室になっていたそうで。
住んでいた娘さんはバンドをやっていて、物件の一室を音漏れ加工したのでまるごと防音室風に壁と床が改造してあり、そのままになっている。
リフォームで元に戻すつもりだったけれど、お金も時間もかかるのでこのままでどうですかと。

大家さんにとっては、娘が住んでいると思えば何も変わらないので、壁をいじったり穴を開けたり好きにして貰って構わないとのこと。
借主となる留美のお母さんや実際に住む留美については、ユウジくんのお母さんも知っていて、留美は優秀な娘さんだと伺ったので問題ない。
マンションの入り口は住人以外は入れないオートロックでセキュリティも万全。
受験生であるユウジくんのことは普段からお母さんに話を聞いているので、ユウジくんの出入りについてもOKです、と。

この物件の隣の部屋も大家さんが並びで所有のオーナー物件で、娘さんの倉庫代わりになっているので今は誰も住んでいない。

ほか、管理組合の活動は大家さんがやるし、困ったことがあれば大家さんの叔父さんが別の階で理事をやってるから言えば良い。



ユウジくんのお母さんと留美のお母さんには、近場で防音というのが気に入ったようで。
おまけに、大家さんの利益は考えなくていいからお友達価格で貸して貰えるというのが決め手になった。



僕が。大学の授業と実験と。
重なるレポートの作成に毎日のほぼ全部の時間を取られている間に。
留美の住む物件はここで決定し、引っ越し作業へと進んでいた。



◆ ◆ ◆



引っ越し先が決まってからは、留美から時々電話が来たり写真付きのメッセージが送られてきたりした。

留美とユウジくんの行為は、引っ越し完了までお預けで。

最初は、最低限必要なモノだけが留美の新居に運ばれていた。

時々。ユウジくんも留美の引っ越しの手伝いをしていて。
ユウジくんのお母さんや大家さんの話では、女性の引っ越しには男性の姿が有った方が女性の一人暮らしと知られずに良いとの事だった。
ユウジくんが留美の家庭教師をうけるために部屋に出入りする事は防犯の意味でも役に立つという判断があったようだ。

留美のメッセージでは。
新規購入は、冷蔵庫と洗濯機。ガスコンロと電子レンジ。
ベッドは折角の新生活なので選んで買いたいから後日購入。
しばらくは実家マンションのマットレスと布団を持ち込んで寝床にする、と。

小物家電や生活雑貨はコツコツ実家に立ち寄って持ち込んで。
沢山持ってくると散らかってしまうので、意識的に持ち込まないようにしたい。
必要なモノを必要なだけに。スッキリと。と言うことだった。



留美からちょくちょく送られてきた引っ越しの写真で。
「ユウジくんにもらったよー」
と、嬉しそうにバスローブを広げた留美が映っていた。

風呂上がりに羽織るバスローブ。
ユウジくんが簡単だけど早速の引越祝いと買ってきたプレゼント。
淡いピンク色で部屋着のガウンとしても使えそうなバスローブだった。

ああそっか、留美に引越祝いを、忘れてた、とぼーっとしていたら、

写真と一緒に留美のメッセージが来た。
「家庭教師するときに」
「これだけを着てたらいいかもね」



僕も留美に何かを贈りたいと留美に話をしたら。
ただ買っちゃうのは好みが合わないと無駄になっちゃうからダメですとストップがかかった。

後日、留美から提案が来た。
留美とユウジくんが引っ越し荷物を運んでいる最中に相談して。
留美が欲しい物を僕に買って貰うことができる方法を用意すれば良いんじゃないかな、ということになったそうだ。

有名な何でも売っている通販サイトに留美が欲しい物をリストとして登録する。
僕たち3人だけがそのリストを見ることができるので、僕のお財布事情に合わせて登録された商品を僕が適時、購入すれば、そのまま留美の新居に配達されてプレゼントできる仕組み。

僕は服のセンスとかがまるで無いので、選ぶことも一苦労だから、このやり方が良いなと思って了解した。



◆ ◆ ◆



留美の引っ越しはほぼ終わり。

留美の毎日は、大学とバイトとユウジくんの家庭教師。
新居で生活しつつ、時々は実家マンションへ親の顔を見たり荷物を取りに行ったりの生活になる。

ユウジくんは高校三年。受験勉強。通学と学習塾がメインの日々。
そして、放課後や祝日に留美の部屋で留美に勉強を教わる。

僕の地方での大学生活はあいかわらずで。
ただただ授業と実験とレポートで時間の無い忙しさが続いていく。



僕と。留美とユウジくんの新しい生活が始まる。

留美とユウジくんの行為もまた、始まる。



数日たった夕方。留美からコールがかかった。

「今からユウジくんが来るよ」




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