HOME = =

「キス」
ビデオ通話アプリは繋がったまま。
スマホから繋いだノートパソコンに全画面で二人の姿が映っていた。
ビデオ通話だから僕の顔は向こうの二人に見えている。

喉の渇きも忘れて、僕は机の上のノーパソをただじっと眺めていた。



僕の彼女の留美と、ユウジくん。
二人が帰宅したマンションの屋上。



映像に映る屋上は柵で囲まれていて危険な場所ではない。
タワマン程ではないがそこそこ高いマンションの屋上で。
芝生、ベンチ、ウッドデッキに、足下を照らすライトがいくつか見えた。

夕飯前の、まだ陽は高いが、映像には都会の景色が広がっていた。

ほんの少し前まではこの都会に僕も居たのに。
今は地方の暮らし。留美の側に居られない。
ため息が出た。


夕方で二人のほかには、夫婦みたいな人影が一組見えただけだった。

ビデオ通話アプリはずっと繋がっていたけど、エントランスからの二人は会話をしなかった。
留美とユウジくんは出入り口から屋上へ出て、裏側へと向かった。



排気ダクトと配電設備の小屋の影。
点検とか以外に人が来る場所じゃない。
周りに全く人は居なかった。



留美の声が聞こえた。
「ココにまた来るとは思わなかったナ」

ユウジくんが話す。
「住人で来るの、俺たちぐらいでしょ。ココ」



留美とユウジくん。
二人だけの場所、なのかな。




留美のスマホが何かの上に置かれて、二人がカメラを見ながら、顔が丁度映る感じでカメラに収まった。



留美の身長は僕よりちょっと高くて160センチくらい。
ユウジくんは留美より10センチほど背が高いらしい。
留美の顔がユウジくんのあごの高さあたりに見える。



二人は向き合って。

ユウジくんはやや下目線で留美を見ている。カメラには向いていない。
留美は目線をあげてユウジくんを見て。
目線を逸らして。
またユウジくんを見て。

そわそわしてて。



留美がペロッと舌を出して自分の唇を舐めて。濡らした。

留美を見ていたユウジくんが、静かにうなずいたように見えた。




二人が何をしようとしているか。

僕の心臓がバクバクした。



留美がカメラに向いて。
僕に向かって言った。

「それじゃ……はじめるね」

静かな声で、

「ユウジくんと……キスしていい?」



僕はハッとして。答えた。
「……いいよ……」



留美がほほえんで。

留美はユウジくんを見た。



ユウジくんが留美の両肩を優しく掴んだ。

留美が顔を上向きに。ユウジくんの顔にあわせる。
まぶたが段々と閉じていく。
ユウジくんが留美の肩を引き寄せた。

留美は目を閉じた。
ユウジくんの顔が留美に近づいた。

ユウジくんも目を閉じ。
留美の唇が、ユウジくんの唇に。



触れた。

キス。

優しく優しく、軽く触れるようなキス。

留美が、僕じゃない男とキスをしている。
留美がキスされている。


とても長い時間に思えた。



音はしていない。静かなキス。

舌も入れてない。

唇を触れるだけのキス。

舌は入れてないのに、わずかに顔を傾けて。

いつまでも、唇が触れ合って、擦れて。くっついて。



留美の声。
「んっ……」

身体をいじってはいない。
ただ触れ合うキスをしているだけ。
「ん……んん……」
留美の声。

キスを。キスを。



唇を離して、目を開け、お互いをみつめて。

またキス。

「ンン……ん……」

何度も何度も。

何度も何度も。リズムを合わせるように何度もキス。



唇を離した時の留美の吐息と。
触れ合っている時の甘い声。
「ん……んん……」



何度も。ずっと。
二人の唇は触れ合い、くっつき、離れては、またくっついた。

留美のキスはずっとずっと続いた。



◆ ◆ ◆



僕の口の中がカラカラになった頃。
二人が距離を取り、二人は目を開けた。

僕のちんこは充血していた。
ちんこを握ってしごいていた。
貧血になりそうだった。



留美は大きく呼吸して。
「ユウジくん、緊張しすぎ……」
留美がクスっと笑った。



留美の肩から手を離して。
「留美お姉ちゃんこそ」
ユウジくんが笑顔で反論した。



二人とも顔が赤い。
夕暮れ時だけど、判るほど真っ赤に見えた。
初々しく。もじもじしてるような。



僕の頭は熱かった。
まだなにかするのか?
次はベロキスする?
舌を入れる?
このあとすぐセックスするのか?
一瞬のうちにバカみたいに考えた。
しごいてるちんこはガチガチだった。



「はい、今日はここまでです」
留美がなにか言い聞かせるようにそう言うと、ユウジくんから離れた。



離れても。
しばらくの間、留美とユウジくんは見つめ合っていた。
互いの赤らんだ顔を、じっと眺めて。

僕は何も声を掛けられなかった。



見つめ合う二人。そして。
耐えきれなくなったのは留美だった。
留美がユウジくんから目線を外して、僕のほうを。カメラのほうを見て言った。
「ドキドキした?」



「ハイ、あ、うん」
実にマヌケに。
貧血気味の頭で。
僕はかすれるような声で答えていた。



留美が微笑んでくれた。
「そう、良かった」



次に何を言うのか。
次に何をするのか。
頭の中がぐるぐるしていたら、留美が切り出した。

「相談があってね」



留美の話だと、

僕の性癖の為にする事なので、僕が興奮してると留美が確認していきたい。
今のように質問することもあるし、僕の顔を見るだけで判るようにもなりたい、と。

また、留美もユウジくんも寝取らせをやった事があるわけじゃないので「新しいこと」はひとつずつやってみたいと。
キスとか、その日までに過去にしたことは、してもいい。
具体的に「新しいこと」は、留美とユウジくんで調べて決めていきたい。
その日のうちに決めることもあるし、次に会って当日に決めることもある。

ほかにも留美とユウジくんの二人でアイデアが浮かんだら僕に相談する。

・・・と。



留美が僕に確認した。
「少し曖昧だけど、これでいいかな?」


僕は、ぼーっとなって聞いていた。
留美とユウジくんのキスのショックから頭が戻っていなかった。
よく判らなかったけれど留美が決めたならそれでいいので、即座にOKしていた。



寝取らせ。
留美が他の男と。
今、キスした。
僕の彼女なのに。
僕が会いに行けない所で。
留美と同じマンションに住む幼馴染みの男と。
遠距離で逢えなくて、同じマンションの男じゃ止められない。
留美が留美が留美が留美が。

キスだけでこの感覚。
僕のちんこはドロドロに。
頭の中は留美のセックスの想像だらけになっていた。



僕がはぁはぁ息を乱しながら、ちんこをいじっていたことは、カメラ向こうの留美は判った感じだった。
僕が興奮しているのを知り。
留美は納得できた様子だった。



ユウジくんをまた見つめ。照れている?
目線をそらし。瞬きを何度もして。
明らかに赤い顔をした留美が。
また、僕のほうを、カメラに向かってつぶやいた。



「次の時はユウジくんに」

「舌を入れてもらうね」






Since Mar.22.2020 Copyright © "SOYOKAZEKAORI" ALL RIGHTS RESERVED.


メニュー

AI


MENU 2
MENU 3
------
リンクは soyo.pink へ張って頂けると幸いです。ご意見・ご感想はツイッター、または、ノクターンノベルズの当方投稿感想宛までお願い致します。